懐かしの名車をカタログで振り返る・・・旧車カタログコレクション(web版)






ホンダ 1996 ステップバーン・S-MX(RH1型)


 1996年にホンダから発売されたステップバーン・S-MX(RH1型)です。初代オデッセイから始まったクリエイティブ・ムーバーと呼ばれるホンダRV車の第4弾として若者向けに登場しました。昔からのクルマ好きにとってはデザイン・内容ともにどうにも受け入れがたいクルマでしたが、ホンダの読み通り、若者のあいだでは結構人気があったようですね。このカタログは標準タイプでもあまり良くない乗り心地を、メーカー自身がローダウン化を施し、さらに悪くしたS-MX・ローダウンの専用カタログです。

 さて、このステップバーン・S-MX、巷では『走るラブホテル』と言われていたクルマでしたね。コーナリング時の横Gから乗員の体をホールドするためのシート形状を犠牲にして、前席・後席ともにとてもフラットなベンチシートを採用し、カタログで説明されている通り、『フルフラットにすればセミダブルサイズのベッドになるシート設計』がなされました。
 それだけでは足りないので、『フルフラットシート時にベッドサイドテーブルとしても使える多彩な収納機能付のリア・システムトレイ(右側/照明付)』も装備し、かつてミシュランと提携してタイヤ事業を行っていたこともある日本の大手ゴム会社のゴム製品やウェットティッシュ等を収納する場所も確保されています。
 これだけ万全な設計をしたうえでカタログで『恋愛仕様。True Love』とまで謳えば、『走るラブホテル』と呼ばれても仕方ありませんね。“走る・曲がる・止まる”が高次元でバランスよく揃っているクルマが“良いクルマ”と世間一般では言われますが、このS-MXの場合、“駐車している時の使い勝手”という新たなベクトルを追加し、それをかなり優先して設計されているようですね。

 私は男ですから女性の心理はわかりません。でもここまで徹底した『恋愛仕様』のクルマで初デートの相手が迎えに来て、「なにもしないから大丈夫だよ。」と言ってもちょっと女性としては信用しづらいかもしれませんね。もし娘のボーイフレンドがS-MXに乗ってデートの迎えに来たら、世の父親の大部分はおそらく良い気分がしないと思います。きっとホンダにも娘のことを思う役員クラスの方がおられ、下心を隠した好青年が理性を失った狼に変身してしまった最悪のケースから女性を守る最後の手段として、左側には後部ドアを設置し、脱出口を確保させたのかもしれませんね。(あくまでも想像の話ですから本気にしないでくださいね)

 個人的には、ホンダのS-MXが出たときにはかなり違和感と嫌悪感があったのですが、最近はこの手のクルマが各メーカーからたくさん販売されていますので、たまにS-MXを街で見かけても何も思わなくなりました。人気車種でしたから現在でも中古車市場では数多くのS-MXが流通しています。しかし中古の『恋愛仕様』って、見知らぬ男女のいろいろなエピソード(他のものも?)が詰まって(付着して?)いそうなので、お祓いして(徹底的に洗車して?)からでないとちょっと乗りたくないですね。

S-MX・ローダウン(RH1型)
全長×全幅×全高 : 3950×1695×1735mm
ホイールベース : 2500mm
車両重量 : 1340kg
エンジン : 直4DOHC 1972cc 130PS

(2011年1月24日記)




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